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裸の王様は、なぜ裸でパレードしたのか

男から電話があったのは3日前だった。俺に聞きたいことがあるから、会いたいと言う。俺は暇な人間だから、いつでも良いと伝えたら、男は今日の午後を指定してきた。

「へぇー、君はジャーナリストなんだ。かっこいいな」

男とは自宅近くのコーヒーショップで会った。俺は男からもらった名刺を興味深く眺めていた。

「ところで、聞きたいことというのは何だい」

男は1冊のうすっぺらい本を出してきた。その本について調べているということだ。

「裸の王様について調べてるのか。変わった人だね。そんなに面白い話でもないだろ」

男は俺の忘れかけていた過去の話を聞きたいようだ。

「えっ、王様の疑惑について調べたいんだって。君~、よく気付いたね、それに気付いてくれる人がいて、俺は嬉しいよ。当時、疑惑を持ったのは、俺だけだったからね。でも、今さら、どうにもならないと思うけど」

男は、俺が抱いていた疑惑と同じ疑惑を抱いていた。俺はやっと仲間が現れたと思った。

「当時の事について詳しく知りたいのかい。だいぶ昔のことだからな。まぁ、出来るだけ思い出してみるから、なんでも聞いてくれ」

俺も暇だし、過去の話をするのも悪くないなと思った。俺が子供の頃の懐かしい話だ。

「パレード中に「王様は裸だ」と俺が叫んだ理由かい。いい質問だな。あの時、みんなは俺が子供だから何も考えないで見たままを叫んだと思ったみたいだけど、それは違うんだ。あの時叫んだのは、騙されてることをみんなに気付いてほしかったんだ」

俺は昔の記憶がよみがえって、少し熱くなってきた。

「誰に騙されてるのかだって。君も疑ってるんだろ。詐欺師だけじゃない、王様にも騙されてたんだ。しかし、あの時、俺が叫んだことで、みんなは詐欺師には気付いてくれたが、王様が詐欺師の仲間だとは気付いてくれなかった」

当時、王様を追い詰めることが出来なかった悔しさがよみがえり、俺は唇を噛んだ。

「そうなんだよ、君の言う通りだ。証拠が無かったんだ。でも、冷静に考えればわかるだろ。バカには見えない衣装なんて王様が信じているわけがない。だから王様は騙されたフリをしてたんだ。詐欺師と仲間だったはずなんだ。そして、バカだと思われたくない、王様に向かって裸だと言えない、みんなのその心理を王様は利用したんだ」

俺は当時のことを思いだし、怒りがこみ上げてきてしまった。

「何故、王様がそんな事したのかって。詐欺師に頼まれたんだろうな。詐欺師は王様の知り合いだったと思う。そして衣装代として多額のお金を王様は詐欺師と山分けしようとした。パレードは税金をこの衣装の為に使ったとみんなにアピールするものだったんだよ。そして、みんなは王様の思惑通り、何も言えなかったんだ。だから俺は叫んだんだ」

男は熱心に話しを聞いてくれたが、俺が知っていることは、これくらいだ。男もそれはわかったようだ。男は詐欺師の情報をほしがった。

「詐欺師が、今どうしてるか知りたいのか。残念だが俺も知らないなぁ。俺が叫んだことで詐欺がバレて国外に追放されたけど、その後はわからない。詐欺師は追放される前に、これは王様に指示された事なんだと訴えたんだよ。でも、無駄だった。その後、詐欺師の姿を見た者はいない。真相は闇の中だよ」

男は詐欺師の情報が無いことを残念がっていた。

「どうしても真相が知りたいのか。でも無理だと思うよ。王様も詐欺師も当時の関係者も行方はわからないし、会えたとしても真相にたどり着くことは難しいと思うよ」

男は首を折った。

「そんなに残念がるなよ。もう過去の事だ。もっと今に目を向けたらどうだ。君の国でも同じようなことが、今でも起こってるかもしれないだろ。それを調べた方が、みんなの為になるんじゃないか」

最後に、男は俺のことを気にかけてくれた。

「その後、俺がどうなったかだって。王様を侮辱したという理由で、俺も国外に追放されたよ」

男は俺に同情してくれていた。

「追放されて、叫んだことを後悔したんじゃないかだって。全く後悔していないよ。あんな王様がいる国は、すぐに滅びると思ったからね。そりゃそうだろ、裸でパレードまでして、みんなを騙し税金を自分の物にする王様が立派な国を作れるはずないだろ。案の定、1年後には滅んだよ。ざまあみろだ」

俺は大声で笑った。男は自分の国も同じようなことがあるので、滅びないかと心配していた。

「君の国も滅びないか心配になったのか。君の国には、君のような人がたくさんいるから大丈夫だよ」