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超短編小説 ロボット

「昨日の優勝戦12レースは惜しかったわ」

「3連単4-6-3で3万円位ついてましたよね」

「おう、俺は4号艇がくると思ってたんだよ」

「でもとれなかったんでしょ」

「おいっ、お前ら、しゃべってないで手を動かせや」

「へぇーい」

「なんだ、その返事は。これ以上、わしを怒らせるな」

小さな工場を経営する三宅は、従業員の仕事ぶりや態度を見て、テーブルを叩き壊したい気分だった。

そんな時、息子の貴史に従業員のロボット化を提案された。ロボットは、さぼらないし作業は速くて正確だと言う。

貴史の提案に三宅は最初、眉をひそめていたが「父さんは毎日事務所に座っているだけで良い。ロボットが作業を全て終わらせてくれる」という言葉を聞いて心が揺らいだ。最近は、体の節々に痛みがあり、現場に入るのが辛くなっていた。

三宅はロボットが作業をしてくれている間、事務所で新聞を読みながらコーヒーを飲む自分の姿を想像してみた。

「いいかもしれんな」そう呟いた。

 

「父さん、ロボット化にしてからご機嫌良さそうだな」

「そうだな、毎日ピリピリしてた頃からは考えられないくらい快適だ。貴史がロボット化のことを教えてくれたおかげだ」

そう言って、缶コーヒーを飲みながら目尻を下げた。

三宅はロボットに作業を全て任せた。ロボットは正確で納期に遅れることもなく、これまでのようなストレスを感じることも無くなった。仕事にストレスを感じていた頃の自分が、バカみたいに思った。

 

「母さん、最近、父さんの調子はどうだ」

「そうね、ロボット化になってから、あなたの言ってた通り、仕事に身が入らなくなったみたい。少しボケてきたみたい」

「そうか、やっぱりそうなったか。ストレスが無くなると、ボケちゃうんだよな。これで俺が工場を仕切ることが出来そうだな。これくらいしないと、父さん頑固だから、俺に工場を任してくれないからな」